お小遣いを貯めて、はじめて買った音楽ソフトはドラゴンクエスト3のカセットテープだった。以来、数えくれないくらいのCDやレコードを買ってきたし、今ではYouTubeなどのサービスでいつどこにいても聴きたい音楽を聴くことができるけど、あの頃赤いラジカセで布団を被って、それこそテープが伸びるほど聴いたドラクエ3のサントラほど、夢中になって聴いた音楽はなかったように思う。
すぎやまこういちさんの凄さ、ドラクエの音楽の素晴らしさを語る能力は、僕にはない。でも、ドラクエの音楽がどれだけ好きだったかなら、いくらでも話せると思う。荘厳なファンファーレに続くロトのテーマ、バロックを模した格調高い王宮のロンド、勇壮な冒険の旅、手に汗握る戦闘のテーマ… ファミコンが同時に出せる音の数は3音(+ノイズ)しかなく、うち1つは効果音に使用するため曲によっては2音しか使用できなかったという。そんな限られた環境で作成された音楽にもかかわらず、僕らの耳はあのピコピコ音の向こうに壮大なオーケストラが聴こえていた。
そんな芸当を、他の誰ができただろうか。
ドラクエ3のカセットテープについていたリーフレットには、いくつかの曲の簡単な譜面が掲載されていて、中学になってお年玉を貯めて買った中古のX68kに打ち込んでは悦に入ったりしていたっけ。このリーフレットには黒田恭一さんの解説も載っていた。今手元に見当たらないため、他所様のブログからの引用をさせていただく。
そして、すぎやまこういちは、この「ドラゴンクエスト」のための音楽を作曲することによって、自分の作曲した音楽が数えきれないほどたくさんのひとたちに数えきれないほど何回もききかえされるという、モーツァルトもベートーヴェンもかちえなかった作曲家としての名誉を自分のものとしたことになるはずである。
世代を超えて、これだけ繰り返し再生され、人々に愛された曲は他あるだろうか。モーツァルトやベートーヴェンも、今頃嫉妬しているかもしれない。
すぎやまこういちさん、安らかに。